1 公立病院の現状

公立病院は全国で970あるが、2001年に赤字の公立病院は50%で累積欠損金は1兆4000億円であったが、診療報酬の切り下げやその他で2006年には75%の公立病院が赤字に苦しみ経常赤字額は1997億円で、累積欠損金は1兆9736億円となっている。

 このため総務省では2007年末公立病院改革ガイドラインを示し、各自治体に公立病院の改革プランの提出を命じた。ガイドラインでは、1, 病床利用率や人件費比率など具体的数値目標を定めての「経営の効率化」、2, 近隣の病院との機能重複を避ける「再編ネットワーク化、3, 経営の権限と責任の一本化や民間的手法を取り入れるため、指定管理者制度の導入など、「経営形態の見直し」を改革の柱にすえた。この中身は廃院にする際の手続きまで示しており、公立病院にとっては相次ぐ医療費の切り下げの中、厳しい時代にたたされている。


2 赤字の原因は?ある評論家の意見

Wedge2008年7月号で一橋大学の井伊雅子教授は赤字の原因を、医師不足、診療報酬改定による医業収入の減少に加え、人件費や医業材料、病院建設費など「公」ならではの高コスト体質によるとしている。そしてこの大赤字の原因は、経営感覚を欠いた病院に責任があり、これを看過してきた行政や議会にも責任がある論
評している。

医師不足による医業収入の減少
人件費、医業材料、病院建設費・保守費


公立病院改革ガイドライン策定のある委員は、民では黒字で維持しているのだから、公立病院はさらなる経営努力をして、公的な繰り入れ金が不必要なレベルまでの収支均衡を目指すべきであると述べている。


3 病院赤字の本当の原因は?

1) 国の低医療費政策が主な原因!

 公立病院が日本の救急医療や良質な医療を支えているといっても過言ではない。その病院の医師も懸命に働いている。それでも赤字になるその医療費の設定や医療政策に問題があるのである。

 赤字は公立病院だけではない。民間病院も加入している日本病院会のデーターでは、診療報酬が3.16%マイナス改定となった年の平成18年6月の1145病院のデーターでは医業収益が下がり、病床数100あたり総費用は1億2102万に対し総収益は1億3927万、平成19年6月の1167病院では総費用1億5135万に対し総収益1億4043万しかなく、全体として低医療費政策のために全体が赤字体質とっていることが明らかであり、70%以上の病院が赤字に苦しんでいるのである。

2) 地方公営企業法の適応を受けるため、病院運営に必要な人材やシステム導入など、状況に応じた弾力的な経営ができない。

 病院運営に素人の事業管理者が、公務員ルールを適応して病院運営をするので効率的運営ができないのが、公立病院赤字の大きな原因である。数字あわせによる経営計画を策定しての病院運営が行われるため、より良い医療を提供しようとする現場医師と意見が合わなくなり、医師が公立病院を離れる要因となり、さらに赤字に拍車がかっている。千葉県病院局長はこの3年の間に3人替わっており、継続的な病院運営方針がとれない中で、赤字になっても誰も責任をとらずに事業管理者が「渡り」を繰り返すので、残された医療現場はさらに疲弊する結果となっている。

3) 医事会計のプロが公立病院にいない!

 医事会計業務が外部委託なので、診療報酬が正しく算定されず、民間に比較してはるか少ない収入しか得られない。

4)その他公立病院赤字の要因

1 公務員の労働時間なので、9時から5時までの診療しかできない。
2 国の低医療費政策のため、良心的医療では赤字になる。
3 いわゆる公務員病といわれる働かない職員をかかえての運営になる。
4 国や県や市の縦割り行政のため、人口密集地では地域の実情を無視した総合病院が乱立し、病院同士の連携や機能分担ができず不効率となっている。
5 医師不足が深刻化し、公立病院では医師を集められない。
6 消費税で医療は非課税だが、材料費や薬品など病院に必要な経費は課税されているため、その差を病院が負担しなくてはならず、その金額は平成7年で病院負担損税は3300億円、総額で4600億円にもなり、病院経営を大きく圧迫している。


4 民間病院の過剰診療も!医療費増大の一因

 公立病院改革ガイドラインが見習えと言っている黒字民間病院の中には、不必要な医療や過大な医療を行って辛うじて経営を維持している病院が多く、実は医療費増大の原因となっているのである。平成20年7月の千葉県の特別審査47件のうち17件が民間病院、15が大学病院、15が公立病院である。高度専門病院が多い千葉県立病院では全体で7件であり、このうち救急医療センター4件、こども病院2件、循環器病センター1件であり、年間8000件の新規入院がある千葉県がんセンターでは1件もないのである。高額請求の上位20位のうち11が民間病院であり、そのうち上位3位までは同じ民間病院で、2つの民間病院で7件を占めている。


5 公立病院を護り、日本の医療を護るために

 公立病院には、患者を護ろうという心優しく技術力にあふれた職員が多く、必死に働いている。しかしこれらの人たちも疲弊し、少しずつ病院から立ち去っており、今や日本の病院医療は崩壊しかかっている。公立病院改革ガイドラインが強力に推進されると多くの公立病院が崩壊し、良質な日本の医療は崩壊すると考える。今こそ厚生省主導の医療から、現場主導の医療に変換させなければならない。それには我々医療者がお互いの医療の質をベンチマーキングし、医療の質を高め国民の信頼を得る努力をしなければならない。無駄な医療や、質の悪い医療している病院などを告発する自浄努力も求められている。国ができないなら県として医療を護る継続的な「医政」が必要である。今が日本の医療を護れるかの正念場と考える。


開設者別でみると、自治体病院579 病院の
うち15.0%(87 病院)が黒字となっていて、赤
字病院は85.0%(492 病院)であった。(この
場合、不採算部門等の医療に対し、地方公営
企業法に基づき地方公共団体が負担すべきも
のとされている負担金等は総収益から除いて
仮定計算を行っているため、法令に基づく病
院決算時点での黒字・赤字とは異なる。)その
他公的病院では、248 病院のうち67.3%(167
病院)が黒字となっていて、赤字病院は
32.7%(81 病院)であり、私的病院では、307
病院のうち62.9%(193 病院)が黒字となって
いて、赤字病院は37.1%(114 病院)であっ
た。 (参考 P48)



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